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盗作されたときにどうするか~きれいごとと現実について~

少し前の話ですが、とても稀有なことがありました。
ある人から、突然メールを頂いたのです。(詳細は割愛します)
内容は、「あなたの作品を、私の教室の生徒が盗作していたのを知らずに、
それをレッスンして、教室のウェブで発表しまっていたことに気が付いた。大変申し訳ない。」
ということでした。

すこし説明が必要ですよね。
私の本業はステンドグラス工房です。
数年前、私の工房では、主力製品は結婚式の際のウェルカムボードでした。
フルオーダーで、お客様おひとりおひとりに、
唯一の大人エレガントなウェルカムボードを制作していました。
その仕事は大変好評で、普通のウェルカムボードの何倍もする高額商品にもかかわらず
私一人の制作では追い付かないほどのオーダーを頂いていました。

しかし、やがて、ネットに、
私のデザインをそっくりそのまま写した作品が、
全国のあちこちの工房のブログなどで、
その工房のオリジナルとか、生徒さんの作品とかで
発表されるようになりました。
その数はかなり多く、
私もブログに、「盗作はやめてください」と何度も書きましたが、
狭い業界ですので、
実は知り合いの工房などもあって、それ以上のことはできません。
しがし、盗作の勢いは止まらず、そのうちお客様からも苦情が寄せられるように。
そこで、新作の発表をネットで行うことができなくなったのです。
当然、新作の発表ができなくなれば、
徐々に営業活動に支障をきたします。
このままでは、この事業は続けられなくなります。

ここで、選択をしなければならなくなりました。

1、盗作している工房(複数)に1軒づつコンタクトを取り、申し立てる。
2、フルオーダーの新作は非公開にし、セミオーダー商品を新たに作り、工房の顔にする。
  量産することで対抗する。
3、撤退する

みなさんなら、どれを選びますか?

私が選択したのは 3、撤退する です。

オリジナルの制作者が、撤退しなければならないことの是非は、ここには書きません。
私の気持ちがどうあれ、これが現実です。

1 申し立ては、業界の縦横のつながりを考えるとできない
2 量産は、私ひとりが生み出しているオリジナル作品である時点で、できない。セミオーダーの量産は不可能。
3 だから、撤退しかない

結論を出すまで、私ももがきました。
セミオーダーで制作できるデザインを考えて作ってみたり、
HPをわかりやすく魅力的に整えて、新作が発表できなくても
工房の特色がわかるようにしたり、様々な工夫を考えました。

でもどれもが、じりじりと後退しながら戦っている状態なわけです。
幼児二人の育児をしながら、田舎暮らしで、どんなに善戦しようとも、消耗戦です。

そこで数年前、苦労して作ったワードプレスのHPを閉じました。
東京ヒルトンに最後の納品をして、
ウェルカムボードの事業を辞めたのです。

【捨てたら何かが入ってくる】とか、【盗作されるのはあなたの作品が素敵だから】とか、
【そんなことは気にせず、さらに良い作品を作り続けるべき】とか
そんなきれいごとは私はどうでもいいと思っています。

撤退したのは、私が戦えなかったからです。
なんの罪の意識もなく、ただ素敵なデザインをネットで見つけたから
つくってみちゃった、という模倣の群衆に、負けたわけです。

ときどき、ハンドメイドの世界でも、
マネされた、盗作された、という話題が定期的にあがることがありますよね。

そんなとき、
たいていのコンサルさんの収束点は、
「あなたの作品がすてきだからです。
模倣などにとらわれず、さらにいい商品を作り続けることが大切です」というきれいごと。
それだけで済む問題ではないのです。
だから、ハンドメイドのコンサル系の本などは、
まず一番最初に、「マネされたらどうするか」という項目を読んで
そこに、いつものきれいごとが書いてあったら本を閉じてしまうくらいです。

マネした相手がひとりならまだ対処可能でしょう。
自分が頑張って相手を凌駕すればいいのかもしれません。
でも相手が複数になってきて、
広がりをどうにも止めることができなくなることもあるのです。

ハンドメイドビジネスではなく、
もっとビジネスの一般について、より深く勉強しなくてはならないことを痛感しました。
戦略について、もっと考え抜かなければならないことに気が付かされました。

模倣されるのが避けられないのならば
模倣を味方につける方法はないのか。
それをずっと考え続けました。

時は流れ。
私は【源 Gen Glass Jewelry】や
【EGG SHELL MOSAIC®】などいくつかの事業を再び起こして試行錯誤しています。
全く、別の戦い方で。

最近、突然に、冒頭のメールを頂いたのです。
昔あきらめた恋人から、「僕が悪かった」みたいなメールをもらった感じでしょうか(笑)
もうきれいさっぱり未練などありません。
むしろ、すごく大きな問題について、
身をもって教えてもらった貴重な経験だったとさえ思っています。
それでも、生涯こんな謝罪を受けることなんてないと思っていたので
とても驚きつつ、でもやはり嬉しかったのです。

考えてみたら
当時私から異議申し立てをして、謝罪メールを勝ち取ったとしても、
「ふん」って、鼻で吹き飛ばしていたかも(笑)
そのくらい、悔しかった。
ステンドグラスのウェルカムボードの仕事、
本当に好きだったし、いいものを作っている自信があったのです。
帝国ホテルやヒルトンなど、名だたるホテルでの挙式に使ってもらえるようになって、
挙式後に新居を構えたお客様から、
新居へのステンドグラスの注文もいただけるようになってきていた矢先だったから。
たったひとりではじめた工房を、
育児・家事・夫の転勤などに翻弄されながらも続けることの難しさは
言葉で伝えることはできないくらいです。

それでもあきらめがたきものをあきらめ、
受け入れ難き現実を受け入れたから、
今があるのだと思えるくらいには、
時が経ちました。

今更のメールで、かえって良かった。
穏やかな気持ちで受け止め、
今後も穏やかに関係が続けられるように返信することができました。
それが私にとって、何年も後にやってきた小さな勝利だったかもしれません。


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画像は、【エッグシェルモザイク®アドバイザーコース】で制作する作品です。
この新しい表現を生み出せたのも、昔の恋人に振られたからね(笑)

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by esperanzaclassic | 2017-06-20 00:59 | エッグシェルモザイク講座

栃木県小山市より世界へ発信。卵の殻がまるでカラフルな大理石のように大変身。アクセサリーからインテリア雑貨まで、あらゆる素材に自由自在。資格を取って活躍できる認定講座も開催中。


by uiko shinohara